ご挨拶

ご挨拶

 

現代社会は環境破壊、貧困、多文化・他民族共生、経済格差等の課題が顕在化し、資本主義や民主主義といった現代社会の根幹が不安定な情勢に陥っています。また、国際化が急速に進展する中で、国を越えて相互に理解し合うこと、広い視野を持つことがますます重要な課題となってきました。

こうした現状において、人々の生活や社会に資することばの教育が求められています。ことばは他者との関係、社会との関係の中で作り出されるものであり、ことばによって人とつながり、世界で起きている事象を理解し、思考するものです。

工学系研究科日本語教室は、2016年度で35年目を迎え、年々日本語教室に求められる教育領域が拡大しつつあります。日本語教室を顧みると、1981年度に留学生に対し日常生活支援としての日本語教育として開始しました。1988年度から大学生活・研究活動のための日本語支援が加わりました。1999年度から日本文化事情教育を実施し、2010年度から留学生の就職活動支援のコースを開設し、さらに国際理解・交流活動を積極的に行ってきました。

近年、日本語教室では留学生へのエンパワーメントだけでなく、日本人学生の異文化に対する寛容性や感受性を醸成し、大学内の共生を創り上げていくための取り組みを実施しています。その実例として、留学生と日本人学生が既有の言語能力を有機的に活用し、交流することを目指して、「多言語交流会:International Cafe for You」を実施しています。また、海外協定校における「日本語授業ボランティア」の体験活動を立ち上げました。海外協定校の日本語授業のサポートを主軸に置いた学生交流を通して、異文化理解やグローバル意識を育てる機会を提供しています。その結果、日本人学生は国際協力・国際交流の意義やあり方について考える機会となり、自己研鑽に繋がりました。

日本語教師は、常に多様な文化背景を持つ留学生と接し、異文化理解の先頭に立ち、集積してきた経験を活かしながらことばの教育を実施しています。今後もこのような実績を活かし、第二言語としての日本語教育、日本文化事情教育だけでなく、日本人学生への国際化教育を推し進め、社会に資することばの教育を実践していきたいと考えます。