概要

ご挨拶
現代社会は環境破壊、貧困、多文化・他民族共生、経済格差等の課題が顕在化し、資本主義や民主主義といった現代社会の根幹が不安定な状況に直面しています。また、国際化が急速に進展する中で、相互理解を深め、広い視野を持つことの重要性はますます高まっています。このような社会情勢の中で、人々の生活や社会に貢献することばの教育の必要性が強く求められています。ことばは他者や社会との関係の中で生み出され、ことばを通じて人とつながり、世界で起きている事象を理解し、思考を深めていきます。
東京大学大学院工学系研究科日本語教育コースは、2021年度に40周年を迎え、その教育領域は年々拡大しています。本コースは、1981年度に留学生の日常生活支援を目的とした日本語教育から始まり、1988年度には大学生活や研究活動の支援を目的とする日本語教育が加わりました。さらに、1999年度には日本文化事情に関する教育を開始し、2010年度からは留学生の就職活動を支援するコースを設置、国際理解や交流活動も積極的に推進してきました。2012年度からは、日本語教育コースでは留学生へのエンパワーメントだけでなく、日本人学生に対しても異文化に対する寛容性や感受性を醸成し、大学内の共生を創り上げていくための取り組みを進めています。その一例として、留学生と日本人学生が互いの言語能力を有機的に活用し交流する「多言語交流会: International lounge」を実施しています。また、2016年度に海外協定校における「日本語授業ボランティア」体験活動を開始し、異文化理解やグローバル意識を育む機会を提供しています。これにより、日本人学生は国際協力や国際交流の意義について深く考える機会を得るとともに、自己研鑽を促進する成果を上げています。2021年度にはコロナ禍を乗り越え、オンライン教材として、大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Courses))を開発し、2023年度からは「さくらサイエンスプログラム」を通じて主にインドから学生を招聘するなど、日本国内外における日本語教育への貢献を目指しています。
日本語教師は、常に多様な文化的背景を持つ留学生と向き合い、異文化理解の最前線で活躍し、蓄積された経験を活かしながらことばの教育を実施しています。今後も、これまでの実績を踏まえ、第二言語としての日本語教育や日本文化事情教育だけでなく、日本人学生に対する国際化教育を推進し、社会に貢献することばの教育を実践していく所存です。
東京大学大学院工学系研究科国際工学教育推進機構
国際教育部門 日本語教育コース
教授 古市由美子
沿革
1981年 11月 |
「日本語及び日本工業事情を含む新研究プログラム」の枠で採用された国費大学7名を対象に工学部・工学系研究科に「日本語コース」として創設 |
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1982年 | 土木工学専攻日本語教室(現:社会基盤日本語教室)開講 |
1983年 | 工学部・工学系研究科国際交流室設置 |
1985年 | 東京大学留学生教育センター(現:日本語教育センター)設立 |
1987年 | 都市工学専攻日本語教室開講 |
1989年 | 原子力工学専攻日本語教室(現:システム創成系日本語教室)開講 |
1997年 | 「工学部日本語コース」から「工学系研究科日本語教室」と名称変更 |
2001年 | MEM(のちにIME)日本語教室開講 |
2004年 | 情報理工学系研究科の留学生を対象者に加える 駒場リサーチキャンパス日本語教室開講 |
2009年 | 留学生、研究生の配偶者を対象者に加える |
2011年 | 「国際工学教育推進機構、国際事業推進センター、日本語教育部門」と名称変更 |
2014年 | 全学交換留学生を対象者に加える |
2015年 | 日本語科目が単位付与科目となる |
日本語教育の目標
目標
- 留学生・研究員などに対する研究・生活支援としての日本語教育
- 留学生・研究員などに対する日本文化事情教育
- 留学生・研究員間の交流、親睦のための多言語・多文化支援
- 国際化推進の一環として、留学生と日本人学生との交流促進
- 工学系に特化した専門日本語教育の基礎研究と教材開発
教職員
研究活動
年次報告書
オフィスとラウンジ
オフィスと2階88LM教室前ラウンジの2ヵ所をそれぞれ受講生に開放しています。オフィスでは、温かい飲み物を提供しています。また、図書の貸出や、リユースの教科書の掲示も行っています。皆さんで気持ちよく使ってください。